前回の記事では、北海道マラソンを例に、過去の参加者のラップやコースの高低図からペース配分を考えました。
では、自分が実際に走るとき、そのペース配分をどのように数字に落とし込めばよいのでしょうか。
「サブ4なら1km5分41秒」といった平均ペースを計算するだけなら簡単です。
でも、初めてフルマラソンを走る人なら、そもそも「自分は何時間を目標にすればいいのか」がわからないかもしれません。
今回は、目標タイムの決め方から、GarminのPacePro、ExcelやGoogleスプレッドシート、市販のペースシールなどを使って、実際のレースペースを組み立てる方法を考えてみます。
まず「現実的な目標タイム」を考える
たとえば、最近ハーフマラソンでギリギリ2時間を切れるようになった人が、初めてフルマラソンに挑戦するとします。
ハーフ2時間切りの平均ペースは、1kmあたり約5分41秒です。
では、そのまま5分41秒でフルマラソンを走れば4時間でゴールできるのでしょうか。
そう単純ではありません。
そこでひとつの目安として使えるのが、VDOTです。
VDOTのアプリでは、自分のレース記録を入力すると、その走力に相当する別の距離のタイムを確認できます。
ハーフマラソン1時間59分59秒(VDOT36.5)で計算し、「同等」タブからマラソン(フル)を見ると、目安として表示されるのは4時間7分40秒。


ハーフを2時間で走れるからといって、単純に2倍して「フル4時間」と考えるより、少し現実的な数字になります。
同じように10kmなど、異なる距離の大会PBや練習記録からも試算できます。
もちろん、VDOTで表示されたタイムをそのまま目標にする必要はありません。
フルマラソンでは、長い距離を走るための持久力も必要です。初フルなら余裕を持たせてもいいでしょう。
まずは自分が走ったことのある距離の記録から、現実的なフルマラソンの目標タイムを考える。
ペース設計はそこから始まります。
Garmin PaceProでコースに合わせて配分する
目標タイムが決まったら、次は42.195kmをどう走るか考えます。
Garminを使っている人なら、PaceProを利用する方法があります。実際のレースは、GPSの揺らぎなどから43km以上走ってしまうこともあるので、少し余裕をもたせた目標タイムに設定するといいでしょう。

PaceProでは、単純に一定ペースで42.195kmを走るだけではなく、前半がゆっくりで後半にかけてペースを上げていくネガティブスプリット、その逆のポジティブスプリットも設計できます。
以下は「ペース戦略」バーを少し右にスライドして、キロ6から走り始め、最終的にはキロ5近くまでペースを上げるネガティブスプリットの設定例です。


ですが、実際のレースでは単純なペースの傾斜を当てはめるだけでは、戦略不足となります。たとえば、北海道マラソンなら、スタートから5km付近までは上り、その後は下り基調になります。
最初の上りでは少し抑え、下りに入ってからペースを上げるといった細かいカスタマイズをしたい場合は、スマホのアプリからでも「スプリットタイムを編集」で操作できますが、パソコン上でログインできるブラウザ版のGarmin Connect(https://connect.garmin.com/)を使った方が簡単です。

前回の記事で考えたようなコース攻略を、具体的な数字にすることができます。
ただし、PaceProが作った数字どおりに走ることが目的ではありません。
当日は気温も違えば、風も吹きます。給水で時間がかかることもあります。
PaceProは「守らなければならないペース」ではなく、レース全体の設計図として使うくらいがちょうどいいと思います。

ExcelやGoogleスプレッドシートならもっと細かく計算できる
もっと自分で細かくシミュレーションしたいなら、ExcelやGoogleスプレッドシートを使う方法もあります。

たとえば、上のペース配分表はこんなふうに設計しました。
- 下り坂が続く前半はざっくり、キロ5分20秒以内で巡航
- 26.3km関門以降の上り坂は、疲労も見込み1%ずつ減速
- 関門までの余裕が何分あるのかを計算
特別な関数などは使っていません。表計算ソフトで四則計算や絶対参照などの数式を組み立てることができれば、簡単にペース配分表を作ることができます。
最終的なゴールタイムがどうなるのか、ペースとなる数値を何度も変え、シミュレーションしました。
ペース配分表をレース当日どう使うか
さて、レース前に自宅でシミュレーションしたペース配分表を当日どう活かすかですが、PaceProなら、作成したペース戦略をGarmin本体に転送して使えます。
私自身はうまく使いこなせていないので、PaceProは机上設計のみとしており、ペース配分表を紙に印刷して持ったりしました。
そこで参考にしたのが、市販のペースシールです。
楽天やAmazonで買えるマラソン用のペースシールには、目標タイムに応じた5kmごとの通過時間が印刷されています。
腕に貼っておけば、レース中に時計と見比べるだけ。
GarminのようなGPSウォッチを使っていなくても利用できます。
「細かい設定や計算は面倒。でも、5kmごとの目安は知りたい」という人には、こうした既製品も便利です。私も実際に購入して利用したことがあります。
そして、こちらが市販のペースシールを参考に私が自作した携帯用ペース配分表です。


まとめ
マラソンのペース配分に、ひとつの正解があるわけではありません。
まずは過去のレース記録などから現実的な目標タイムを考え、そこからコースの高低差や後半の疲労などを加味して、自分なりのペース配分を組み立てていく。
VDOTで目安を出してもいいし、Garmin PaceProに任せてもいい。もっと細かく考えたければExcelやGoogleスプレッドシートを使い、面倒なら市販のペースシールでも十分です。
大切なのは、精密な数字を作ることよりも、42.195kmをどう走るかをレース前に一度考えておくことだと思います。
そして当日は、作った数字に縛られすぎず、その日の天候や体調、実際の走りに合わせて調整する。
私の場合は、あれこれ計算した結果を最後は小さな紙にして、黒糖と一緒にポケットへ。
デジタルで考えて、最後はアナログ。
これくらいがちょうどいいのかもしれません。

