マラソンの目標はなぜみんな同じ? サブ4以外の物差しを調べてみた

分岐する道を走る女性と「マラソンの目標は『サブ○』だけじゃない」の文字 ランニング

マラソン大会で完走できるようになった人の次の目標として、よく使われるのが「サブ○」です。

フルマラソンを4時間未満で走るサブ4。3時間30分未満のサブ3.5。3時間未満のサブ3など。

数字だけで目標を共有できるため、とてもわかりやすい指標です。

なかでもサブ4は、市民ランナーにとってひとつの大きな節目とされています。マラソン界における「英検4級」のようなものでしょうか。難易度が同じという意味ではなく、その言葉を聞けば、だいたいどのあたりにいるのかが誰にでも伝わる共通語です。

しかし、年齢も性別も違うランナーが、全員同じ「4時間」という物差しで自分を測ることには、少し違和感もあります。

「サブ4は誰でも到達するライン」と言われた

私がサブ4を具体的な目標として意識し始めた頃、ブラインドマラソン伴走者の先輩から「サブ4は誰でも到達するラインだよ」と言われたことがあります。

当時所属していたランニングチームの監督からも、「サブ3.5まではいけるよ」と言われました。

どちらも私を励ますつもりで言ってくれたのだと思います。実際、私もその後、フルマラソンを3時間47分台で走り、サブ4を達成しました。

それでも、「サブ4は誰でも」という言葉には、少し引っかかるものがあります。

走り始める年齢も、身体の状態も、使える時間も違います。男性と女性でも記録の分布は異なります。持病や障害の有無、仕事や家庭の事情によって、練習できる条件も大きく変わります。

そのすべてを取り払って、4時間を切れば合格、切れなければまだ足りないと考える必要はあるのでしょうか。

そもそも、マラソンの目標は「サブ○」だけなのでしょうか。

年代や性別によって変わる基準もある

調べてみると、マラソンの世界には、年齢や性別を考慮した基準もいろいろありました。

以下は、2026年8月時点で各大会や団体が公表している基準です。今後変更される可能性があるため、実際に利用する場合は最新の公式情報を確認してください。

大阪マラソンの「市民アスリート」

大阪マラソンには、年代・性別ごとに定められた基準タイムを突破した人が申し込める「市民アスリート」という枠があります。

名称に「市民」とありますが、大阪市民に限定された制度ではありません。基準を満たしていれば、全国から申し込むことができます。

大阪マラソン2027の基準タイムは次のとおりです。

年齢男性女性
18~39歳3時間00分以内3時間45分以内
40~49歳3時間10分以内3時間50分以内
50~59歳3時間25分以内4時間10分以内
60~69歳3時間50分以内4時間40分以内
70歳以上4時間30分以内5時間20分以内

同じ「市民アスリート」でも、年代と性別によって基準が異なります。

55歳女性である私の基準は4時間10分以内です。大田原マラソンで出した3時間47分台は、この基準をクリアしています。

参考:大阪マラソン2027 市民アスリート申込方法

シカゴマラソンのタイム資格

海外の大規模マラソンにも、年代・性別ごとの基準があります。

シカゴマラソンでは、抽選のほかに、基準タイムを突破したランナーが「タイムクオリファイ」として出場できる制度があります。

2026年大会の基準は次のとおりです。

年齢男性女性・ノンバイナリー
16~34歳2時間50分以内3時間20分以内
35~39歳2時間55分以内3時間25分以内
40~44歳3時間00分以内3時間30分以内
45~49歳3時間10分以内3時間40分以内
50~54歳3時間15分以内3時間50分以内
55~59歳3時間25分以内3時間55分以内
60~64歳3時間40分以内4時間15分以内
65~69歳3時間55分以内4時間30分以内
70~74歳4時間15分以内4時間45分以内
75~79歳4時間30分以内5時間00分以内
80歳以上4時間50分以内5時間20分以内

シカゴマラソンより厳しいタイム基準を設けている海外大会もあります。

ただし、シカゴの制度は、基準を満たした公式記録を提出すれば、タイム資格による出場枠が保証されます。性別・年代別の基準を採用している海外大会の例として、比較的仕組みがわかりやすい制度です。

55~59歳女性の基準は3時間55分以内です。私の3時間47分台は、この基準もクリアしています。

単に「サブ4の記録」と見るのか、「シカゴマラソンの年代別タイム資格を突破した記録」と見るのか。

同じタイムでも、当てる物差しによって意味がずいぶん違って見えます。

参考:Bank of America Chicago Marathon – Apply

ONE TOKYO RCの入会基準

私が陸連登録をきっかけに所属することになったONE TOKYO RCにも、性別・年代別の入会基準があります。

フルマラソンの基準タイムは次のとおりです。

年齢男性女性
19~29歳3時間05分以内3時間55分以内
30~34歳3時間10分以内4時間00分以内
35~39歳3時間15分以内4時間05分以内
40~44歳3時間30分以内4時間20分以内
45~49歳3時間35分以内4時間25分以内
50~54歳3時間40分以内4時間30分以内
55~59歳3時間45分以内4時間35分以内
60~64歳4時間10分以内5時間00分以内
65~69歳4時間20分以内5時間10分以内
70歳以上4時間45分以内5時間35分以内

ONE TOKYO RCは、フルマラソンだけでなく、30kmまたはハーフマラソンの記録でも入会基準を満たすことができます。

55~59歳女性の場合は、フルマラソン4時間35分以内、30kmが3時間10分30秒以内、ハーフマラソンが2時間10分30秒以内です。

男性の場合も、年代が上がるにつれて基準タイムが変わります。ここでも、すべてのランナーに同じタイムを求めているわけではありません。

参考:TEAM ONE TOKYO

同じ記録でも、物差しによって見え方は変わる

私の自己ベストである3時間47分台を、いくつかの物差しに当てはめてみます。

  • 一般的な区切りでは「サブ4」
  • 大阪マラソンでは「市民アスリート」の基準をクリア
  • シカゴマラソンでは55~59歳女性のタイム資格をクリア
  • ONE TOKYO RCでも年代別の入会基準をクリア

記録そのものは、どこから見ても3時間47分台です。

それでも、「サブ4ランナー」とだけ表現するより、自分の年代や性別を考慮した基準に照らしてみると、違った現在地が見えてきます。

これは、自分に都合のよい基準を探して、記録を大きく見せるという話ではありません。

年齢や性別による違いをなかったことにせず、自分がどんな条件のなかで走っているのかを含めて、記録を捉え直すということです。

この記事を読んでいる方も、自分の年代と性別の欄に、現在の記録を当てはめてみてください。

いつも使っている「サブ○」とは少し違う、自分の現在地が見えてくるかもしれません。

「いまさらサブ4」という葛藤もあった

私には、サブ4を最初から素直に目標にできたわけではありません。

走り始めてからの年数だけを見れば、私の走歴は短くありません。

しかし、その間には故障による離脱があり、持病が悪化して走れなかった時期もありました。再び走れるようになっても、以前の状態に戻すところから始めなければならないことが何度もありました。

結果として、走歴だけが長くなり、思うように経験や記録を積み上げられない期間が続きました。

だからこそ、サブ4を目標にするときには、「長く走ってきたのに、いまさらサブ4なのか」という葛藤があったのも正直なところです。

まわりを見れば、もっと短い期間でサブ4を達成する人もいます。すでにサブ3.5やサブ3を目指している人もいます。

そうした人たちと比べると、サブ4を目標として掲げること自体に、どこか気恥ずかしさを感じていました。

一方で、私には思い入れのある大田原マラソンを走りたいという気持ちがありました。

大田原マラソンの制限時間は4時間です。制限時間が厳しく、後半は向かい風と上り坂が待つ、簡単ではないコースです。

大田原を完走するためには、まずサブ4以上の走力が必要でした。

誰かに評価されるためのサブ4ではなく、自分が走りたい大会を完走するためのサブ4。そう考えることで、ようやく自分の目標として受け入れられたのだと思います。

サブ4が次の経験につながった

実際にサブ4を達成してみると、それは単なる通過タイムではありませんでした。

伴走者として走るときも、大会公式ペースメーカーに応募するときも、「フルマラソンを4時間未満で走った」という実績は、とてもわかりやすいものです。

もちろん、伴走やペースメイクに必要なのは、自分が速く走れることだけではありません。相手に合わせる力や、一定のペースを保つ力、周囲の状況を見る力なども必要です。

それでも、サブ4という実績があったからこそ、「自分も手を挙げてよいのではないか」と思いやすくなったのは確かです。

難易度の低い目標だと思われたとしても、それをひとつ達成することで、次にできることが増える場合があります。

小さく見える目標でも、コツコツと積み重ねていくことには意味があります。

「いまさら」と感じていたサブ4も、振り返ってみれば、その後の伴走やペースメーカーとしての経験につながる、大切な一歩になりました。

70歳を過ぎても大田原を完走したい

サブ4という目標は達成しましたが、そこで終わりではありません。

私の長期的な目標は、70歳を過ぎても大田原マラソンを完走できる走力を維持することです。

現在55歳。そこまで、あと15年以上あります。

15年のあいだ、ずっと自己ベストを更新し続けることはできません。速くなれる時期もあれば、同じ走力を保つことが目標になる時期も、年齢による変化を受け入れる時期も来るでしょう。

では、その長い道の途中に、どんな目標を置けばよいのでしょうか。

タイムを縮める。年代別の基準を突破する。年代別順位を上げる。難しいコースを完走する。故障せず練習を続ける。伴走者やペースメーカーとして誰かのレースを支える。

今は、そうしたいくつもの物差しを組み合わせながら、途中の目標を模索しています。

サブ4は、ランナー同士で通じやすい便利な共通語です。しかし、それは数ある物差しのひとつにすぎません。

みんなと同じ区切りを目標にしてもいい。年代や性別に応じた基準を使ってもいい。自分が走りたい大会から、必要な走力を逆算してもいい。そして、ときにはタイム以外のものを目標にしてもいい。

一見すると控えめな目標でも、それが次の経験につながることがあります。故障や病気で立ち止まる期間があっても、その時点の自分に合った目標から、また積み上げ直すこともできます。

大切なのは、世間でよく使われる目標に自分を合わせることではなく、自分がどこへ向かいたいのかを考え、そのために必要な目印を自分で選ぶことなのだと思います。

私の場合は、70歳を過ぎても大田原マラソンのゴールを目指せること。

そこへ向かう15年の途中に、どんな目印を置いて走っていくか。これからも、その時々の自分に合った目標を選び直していきたいと思います。