前の記事で、「30km走にこれが正解、というものはない」と書きました。
走力も違えば、練習の目的も違う。コースや気温、その日の体調によっても適切なペースは変わります。
では、実際に30km走をするときは、どのくらいのペースで走ればいいのでしょうか。
私は「なんとなくこのくらい」ではなく、まず数字を出してみます。
レースペースから○%落とす。VDOTを見る。最近の実走やGarminのログを見る。そこにコースや気温、体調を加えて調整する。
つまり、緻密に計算して、柔軟に使うという考え方です。
「レースペースより10%遅く」はどう計算する?
練習会などで「レースペースより10%落として」と言われることがあります。
計算するときは、ペースをいったん秒に直すと簡単です。
たとえばレースペースが5分00秒/kmなら300秒。
300秒 × 1.10 = 330秒
→ 5分30秒/km
レースペースが5分30秒/kmなら秒換算330秒なので、
330秒 × 1.10 = 363秒
→ 6分03秒/km
目安を表にすると、こんな感じです。
| レースペース | 5%遅い | 10%遅い | 15%遅い |
|---|---|---|---|
| 4’00/km | 4’12 | 4’24 | 4’36 |
| 4’30/km | 4’44 | 4’57 | 5’11 |
| 5’00/km | 5’15 | 5’30 | 5’45 |
| 5’30/km | 5’47 | 6’03 | 6’20 |
| 6’00/km | 6’18 | 6’36 | 6’54 |
| 6’30/km | 6’50 | 7’09 | 7’29 |
| 7’00/km | 7’21 | 7’42 | 8’03 |
ただし、これは「30km走は10%遅く走ればいい」という意味ではありません。設定を考えるための物差しのひとつです。
なお、「10%遅く」と「速度を90%にする」は厳密には同じではありません。
5分00秒/kmなら、10%遅くすると5分30秒/km。速度を90%にすると約5分33秒/km(300秒÷0.90=約333秒)です。
また、「レースペース+30秒」も割合にすると人によって違います。
4分00秒/km+30秒なら12.5%遅く、6分00秒/km+30秒なら約8.3%遅い。
どの表現が正しいというより、その数字が何を意味しているのか一度確認してから使うのが大切だと思っています。
VDOTで「今の走力」も見る
もうひとつの物差しがVDOTです。
VDOTでは、レース記録などから現在の走力を推定し、E(Easy)、M(Marathon)、T(Threshold)などのトレーニングペースを確認できます。
30kmだから必ずMペース、というわけではありません。
レースに近い強度で長く押すならMペースが参考になりますし、脚づくりや長時間動き続けることが目的なら、もっと余裕のあるペースでも構いません。
ここで気をつけたいのが、目標タイムと現在の走力を混同しないことです。
「次は3時間30分を切りたい」からといって、今の30km走を3時間30分相当のペースにする必要はありません。
最近の5kmや10km、ハーフ、ペース走、ロング走などから、今どのくらいの強度なら安定して走れるのかを考えます。
気温で調整する
VDOT Calculatorというアプリを使えば、簡単に自分のVDOTを計算できます。
夏なら気温も無視できません。
たとえば、私のフルPB(11月開催大田原マラソン)である3時間47分56秒の平均ペースは5分24秒/kmですが、気温を30℃に設定すると5分38秒/kmと表示されます。


もちろん「30℃なら必ず14秒落とせばいい」という話ではありません。暑さへの強さ、湿度、日差し、風などでも変わります。
それでも、普段のペースを暑い日にもそのまま当てはめるより、今日は条件が違うと考える材料にはなります。
Garminの過去ログは「自分専用のペース表」
私がかなり参考にしているのが、過去のGarminログです。
一般的なペース表には、自分がいつも走っているコースの坂や信号、気温、路面までは入っていません。
でも、Garminの過去ログには、
- 平均ペース
- ラップ
- 心拍数
- 高低差
- 後半の失速
- 走り終えたときの余裕
などが残っています。
以前同じコースを6分00秒/km前後で30km走り、25km以降も余裕があったなら、それは次回の設定材料になります。
逆に後半に心拍が大きく上がり、フォームも崩れていたなら、同じ設定にこだわる必要はありません。
同じ自分が、同じ場所を走った記録は、一般的な計算式以上に役立つことがあります。
計算で出した数字は「スタート地点」
レースペースから○%、VDOT、最近の実走、Garminの過去ログ、コース、気温。
こうした材料から、まず基準となる数字を出します。そのうえで、今日のコース、気温、体調、この30kmで何を練習したいのかを加えて調整します。
緻密に計算して、柔軟に使う。
計算で出した数字はゴールではなく、設定ペースを考えるためのスタート地点です。
以前の私は、設定したペースそのものにこだわりすぎて、コースや気温が違っても、できるだけ同じ数字で走ろうとしていました。
今は、条件が違えばペースも変わって当然だと考えています。大切なのは、同じ数字を守ることではなく、その日の条件の中で同じくらいの負荷になるよう調整することだと思っています。
ChatGPTは「答え」より壁打ちに使う
最近は、この作業にChatGPTを使うこともあります。
「30kmを何分/kmで走ればいい?」と丸投げするのではなく、最近の記録、Garminログ、高低図、走るコース、気温、練習の目的などを渡して、一緒に材料を整理します。データはグラフなどスクリーンショット画像のままでも構いません。
AIが出したペースが正解というわけではありません。
実際に走るのは自分です。
私はChatGPTを、練習メニューを決めてもらうコーチというより、自分が持っているデータを一緒に眺める壁打ち相手として使っています。
30km走のペースは自分で組み立てる
30km走の設定ペースは、絶対に守らなければならないノルマではありません。でも「なんとなく」で決めるのはもったいないです。
走り終えれば、新しいGarminログが残ります。そのデータを次の練習に使えば、自分なりの判断材料がまたひとつ増えます。
一般的な「30km走は○分/km」という数字だけではなく、自分で自分の設定ペースを組み立てられるようになる。
私は、それがいちばん使える30km走のペースの決め方だと思っています。

